品格のあるマウントって、なに?

品格のあるマウントって、なに?|『品格のあるマウントのとり方』中野信子

中野信子『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』を読みました。マウントをあまり気にしない自分が、三島由紀夫の三重の罠と「受信者の文脈」に引っかかった話と、全社に出す文章の上から目線チェック、「尊敬しかない」と無敵のバリアについて書いています。

品格のあるマウントって、なに?と思って、献本の案内に手を挙げました。

ツナグ図書館の案内にあった、中野信子さんの『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』【PR】(日経BP)です。

帯には「エレガントな毒の吐き方 過激編」とあります。

序章で、著者はこう言います。

「本書は「道徳の教科書」ではありません。むしろ、私は「マウンティング」を肯定したいのです」

マウントは醜いのでやめましょう、という本ではありませんでした。

脳科学と霊長類の話から、マウントを品格のある形に変えていく本です。

気にしないほうの自分が、読みました

自分は、普段からマウントをあまり気にしないほうです。

若いときは、ブランド物がほしいとか、あの車がほしいとかありました。いつのまにか、そこまで興味がなくなりました。

持っている人を見ても、すごいですね、と思うくらいです。

わたしはわたしで、日々忙しくも楽しく過ごしています。それで満たされているんだと思います。

と書いている時点で、「はじめに」にある「私はマウンティングなんて下品なことには興味ありません」と微笑む人、そのものかもしれませんが。

三島由紀夫が描いた、三重の罠

そんな自分が、この本でいちばん引っかかったのは、2章の三島由紀夫の節でした(109〜114ページ)。

三島由紀夫の小説『音楽』に、絶世の美女が変装用の眼鏡を外す場面があるそうです。

彼女は、自分が眼鏡をかけていなければ美しすぎてしまうと知っていて、それを第三者に悟られないようにしている。

本書はこれを「人間の自意識が描く最も残酷なスパイラルです」と書きます。

美しさを隠そうとし、隠そうとしたことを隠し、相手のプライドを傷つけないために、その意図自体も隠す。三重の罠です。

「けれどももう彼女は抗うことに疲れていて、ごく慣れきった様子で自然にこの三重の罠を処理していくさまも、本当に彼女が美しいということを暗に示している、というのが三島由紀夫の描写のすごさでもあります」

こんな昔から、このようなマウント的なことがあったのか。そう思いました。

そして、人間の心理をここまで上手に言葉にできるのが、すごいなと。

三島由紀夫の作品は、読んだことがありません。中野さんの書き方に惹かれて、三島の文章が気になっています。

言葉の意味は、受け取る側で決まる

もう1箇所、106ページの一文です。

「コミュニケーションにおいて、言葉の意味は、発信者ではなく「受信者の文脈」によって決定されるものです」

いくら自分にそういう意図がなくても、言われた本人がそう思ったのなら、そうだよな、と。

受け取った側の感じ方で決まるという意味では、セクハラの判断と同じ構造だと思いました。

前に書いた、入ってきたばかりの人に言った冗談が、数年後に「あれは怖かった」と言われた話も、これでした。

緊張していると思ったので、和ませるつもりだったんです。

全社に出す文章の、上から目線チェック

いまは総務として、全社に向けて文章を出すことが、月に3、4回あります。

出す前に、Geminiに見てもらっています。上から目線になっていないか。わかりやすいか。

「〜ください」は命令しているように聞こえるので、「お願いします」に直すことが多いイメージです。

自分が意図しない言葉の捉え方は、あると思っているからです。

この本には、「貴方の存在そのもの」が誰かへのマウントになる、という話も出てきます。

ただ生きているだけで、誰かの心を傷つけてしまう可能性を常に孕んでいる、と。

そうなると、何を言ってもダメです。

あちらが嫌なのであれば、わざわざこちらから何かすることはないので、基本、近づかないです。

読み終えてから、マウントという言葉を聞くたびに、品格あるマウントってどうすればできるのかと思うようになりました。

ただ、普段使わない言葉なので、なかなか難しいです。そういう言葉を覚えるのが、なんかおっくうでもあります。

一度気になりだすと、前よりも耳にすることが多くなった気がします。カラーバス効果というやつでしょうか。

品格のあるマウントの、本書の答え

で、品格のあるマウントってなに?の答えです。

本書の答えのひとつは、「尊敬しかない」でした。

相手の自慢やマウントに、無邪気な顔で「……尊敬しかない!」と言い放ちます。

称賛しているようでいて、それ以上の追撃を封じます。

「「尊敬」という名の、優美な呪い」だそうです。

裏の翻訳も書いてあります。

「(ご自身の実績をそこまで繰り返し、強調して語らなければならないほど、貴方のお立場は実際には心許なく、お心にも余裕がないのですね。その焦りに耐えて生きていらっしゃることそのものが、もはや)尊敬しかありませんね」

この翻訳があれば、うまく使えそうです。

いつのまにか張れていた、バリア

そして「おわりに」に、こうありました。

「ロンドン紳士のエレガンスとは、「私は自分の世界で完全に満たされているので、貴方と競争する必要がありません」という姿勢そのものです」

無敵のバリアを張ること、と本書は言います。

自分の場合、ブランドや車では、いつのまにかバリアが張れていたみたいです。

ただ、AIと本のことになると、気になる部分は出てくると思います。

みなさんは、何のことになると気になりますか。

本書はツナグ図書館経由で日経BP様よりご恵贈いただきました。ありがとうございます。

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