中村俊輔選手の引退会見を、本で思い出しました。
読んだのは、米澤穂信さんのデビュー25周年記念の随筆集『談話室米澤』【PR】(日本経済新聞出版)です。
目黒川の桜から落穂拾いの由来まで、ミステリ作家の考えごとが60篇以上並んだ一冊です。
いちばん引っかかったのは、一篇「会見を聞いた話」でした。
日本一うまい人が、まだうまくなりたい
令和四年にあった、中村俊輔選手の引退記者会見の話です。
サッカーを続けてきた原動力を聞かれて、中村選手は「うまくなりたい」と答えました。
会見そのものは、ニュースで見た記憶があるくらいです。そう答えていたのは、この本を読んで思い出しました。
米澤さんはこう書いています。
「日本で一番サッカーがうまい選手だったわけです。その中村選手が、うまくなりたいという欲求こそがサッカーを続けてきた理由であったという。とっくにうまいじゃないか、という疑問が湧いても不思議ではありません」
当時の自分も、うまくなりたいと思っていました
自分は中学・高校とサッカーをしていたので、中村俊輔選手のすごさは知っています。
当時は自分も、うまくなりたいと思って練習していました。
ディフェンダーだったので、通常の練習が終わってから、後輩と1対1をしていました。その1対1ぐらいしか、頭になかったです。
当時はネットがなくて、それでもビデオを借りるなど、うまくなるすべはあったはずです。でも、そこまではしていませんでした。
精一杯やっていたのは確かです。ただ、熱中していたのとは違うような気がしています。
うまくなりたいという衝動に、理由などない
米澤さんは、中村選手の答えに心から納得したと続けます。ご自身も、うまくなりたくて仕事をしているからだと。
「書き続ける本当の理由は、うまくなりたいから。それ以外にはないのです」
少しあとには、こうあります。
「本当に小説が好きなのか、私にはもう、よくわかりません。うまくなりたいという衝動に理由などなく、その先は言葉にならないのです」
そこまで極めたいものに出会えた人には、出会った瞬間、電撃とかビビビみたいなものが来たんでしょうか。それとも、続けているうちに気づいたらそうなっていたんでしょうか。
自分にも、そういうものが見つかるんだろうか、と。
サッカーは続かず、読書は続いています
サッカーは、高校まででやめました。そのあとフットサルをしたり、スタジアムで観戦したりもしました。
ただ、なんかピンとこなくて、いまはテレビで見るぐらいで落ち着きました。
昔から続いているものといえば、読書です。好きで、いまも読んでいます。
ただ、そこに「うまくなりたい」みたいな衝動は、たぶんありません。
知らない世界を見られるのが楽しい。そんな考えがあるのかと知れるのが面白い。続けている理由は、それくらいです。
完璧を待たずに、出しながらうまくなっていく
うまくなりたい人が完璧とどう付き合っているかも、この本に書いてありました。
「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない。」
一篇「自戒――忘れられない言葉」で紹介される、中井英夫さんの言葉です。
米澤さんはこの戒めを胸に置きながら、こう続けます。
「完璧には憧れますが、泥まみれの文章でもとにかく書いてしまって、嘲笑と指弾を浴びながらでも少しずつうまくなっていくことが、私は好きです」
日本一うまい人も、直木賞作家も、完璧を待たずに、出しながらうまくなっていく。
これは、覚えがあります。高校では下手くそでしたが、先輩にもまれながら、3年間練習にたえました。
そのあいだに、同年代のうまかった人たちがやめていきました。
気づけば、そのやめていった人たちより、うまくなっていたと思っています。
初めてホームページを作ってみました
自分も「完璧より速く(Done is better than perfect)」が、性格に合っているタイプです。
死ぬとかにならないのであれば、まずは出す方です。
最近も、関わっている小さな会社で、ホームページを作る話が出ました。
「AIで作れるので、何十万もかけなくても大丈夫ですよ」と伝えたのですが、口で言うだけでは説得力がありませんでした。
それで、Claude CodeというAIを使って、初めて自分で作ってみました。
もっと速くできると思っていたのに、出来上がったサイトになんだかんだと指摘していたら、たたき台まで4時間かかりました。
もうひとつの発見は、写真でした。あるだけで、サイトのイメージが全然違ってきます。
ここがプロのわざなんだと思いながら、ここもAIをうまく使うすべを身につければいけるんだろうな、とも思いました。
自分のがダメでも、もともと頼む予定の会社があります。だから気軽に出せました。結果は、まだこれからです。
司書さんに相談したことは、まだありません
この本には、「都立中央図書館とレファレンス」という一篇もあります。
米澤さんが仕事の途中、江戸時代の命令書を急に調べる必要に迫られます。夜まで開いている都立中央図書館へ、タクシーで駆け込みます。
相談を受けた係の方は、たちどころに調べる方針を示します。十五分後には、目当ての文書に辿り着かせてくれます。
自分も図書館には週1で行っていますが、予約した本を受け取っているだけです。
司書さんに調べものを相談したことは、まだありません。いまは、ネットでだいたい調べられてしまうからです。
ネットを超えて調べたいものが出てきたとき、自分のやりたいことがそこだと思えそうな気がします。
ま、気がするだけかもですが。
電撃はまだ来ていません。コネクティングドットではないですが、立ち止まっていても、極めたいものは見つけられない。
とりあえず、点を打ち続けます。
本書はツナグ図書館経由で日本経済新聞出版様よりご恵贈いただきました。ありがとうございます。
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