読み終えて最初にしたのは、ある映画の公開年を調べることでした。
夜中の1時すぎです。出てきた数字を見て、衝撃を受けました。
東野圭吾さんの『永遠の記憶』【PR】(文藝春秋)を読みました。
ガリレオシリーズの最新長編です。著者が亡くなったのは、発売の2週間ほど前でした。
新作の発売は、今はXで流れてきて知ります。今回は訃報のあとで話題になっていて、目につきました。
買いに行ったら、在庫切れでした。8月末に入荷すると聞いて、待つつもりでいました。
それがたしか1週間ほど早く入りました。入荷したこともXで知って、買いに行きました。
このシリーズは、結婚する前からずっと買っています。おもしろかったので、たぶん全部読んでいると思います。
出版社の紹介文にある範囲まで
物語は、内海薫が刺されるところから始まります。犯人は70歳ほどの老人で、取り調べには黙秘を貫きます。
湯川と草薙は、老人の持ち物を手掛かりに、「忘れてはいけない謎」の扉を開いていきます。
ここまでは、出版社の紹介文にある範囲です。ここから先は、ネタバレになるので書きません。
秘密を暴いてきた側の、二人の会話
スキャンして残したのは、第二部の終盤、見開き2枚ぶんです。湯川と草薙が、ふたりで話している場面です。
草薙は、刑事として暴いてきた秘密の数を振り返ります。
「だけど俺が秘密を暴いたことで、きっと傷ついた人もいる。知りたくなかったことを知ってしまった、と警察を恨んだ人も少なくないはずだ」(290ページ)
そして、こう続けます。
「一度ぐらいは、仕方のないこと、と真相を呑み込んでもいいんじゃないかと思うわけだ」(290ページ)
読みながら、賛成寄りでした。
何も知らない人に真実を伝えるのは、酷すぎると思います。そこまで追い詰める必要はない、とも思いました。
総務のフィルターと、相談を受けたとき
自分の仕事に置き換えてみます。
自分の仕事は、総務です。正直、全部を素直に報告しているわけではありません。
あくまで自分のフィルターを通しています。ただ、自分が正しいと思ったら、何かを伝えるようにしています。
たとえば、誰かから相談を受けたときです。
本人がそれを大ごとにしたいのか、したくないのかによります。本人が望んでいないのであれば、動くべきではないと思っています。
4ヶ月前に、職場で相談を受けました。
「何もしないでください」「誰にも言わないでください」が前提でした。なので、話を聞くだけで、動きませんでした。
ただ、目に見えてしんどくなっていくなら、動くつもりでいました。見ていられないからです。
そのときは本人にもう一度話を聞いて、こう動くけどいいか、と確認するつもりでした。
しんどいときに本人が冷静に判断できているかは、難しいところです。そこは慎重に見極める必要がある、とも思っていました。
こういう判断は、年に1回あるかどうかです。
自分のフィルターが絶対的に正しいとは、思っていないです。
草薙の話を聞いた湯川は、しばらく黙ったあと、草薙のほうを向きます。
「その表情は心なしか柔らかくなっているように見えた」(291ページ)と、地の文にあります。
そして、こう言います。
「僕たちはずいぶんとたくさんの秘密を暴いてきた」(291ページ)
帯にも使われている一文です。さらに続きます。
「どうすればよかったのか、未だに答えを出せずにいる」(291ページ)
涙は出ず、こころが温まりました
この場面で、涙は出ていません。
その少し前のページに、自分のせいで起きたことを、自分事としてとらえている人が出てきます。
「そんなこと知らない」と言ってもおかしくないですし、無視するという選択肢もあります。そのなかで、自分事にしていました。
若い人だと、なおさらです。
複雑な気持ちになりつつも、そこまでの覚悟というか、別のものを感じました。
物語のなかで、時間はちゃんと続いています。
こころが温まりました。そういう人に、魅力を感じるからです。
真相る(ひきうける)
この本の章題は、第一部が「履歴る(たどる)」、第二部が「終活る(ふりかえる)」です。
出版社の記事によると、読者から募集したタイトルから選ばれたものだそうです。
同じ型で、この本を自分なりに一語にしてみました。
「真相る(ひきうける)」です。
真相を、暴くのではなく引き受ける、という意味にしました。
草薙の「呑み込んでもいい」にも、自分事にしていた人にも、当てはまる読みです。
映画館で泣いた気がする映画
読み終えて調べていたのは、昔、映画館で見た気がする映画の公開年です。
思っていたより、ずっと前でした。
いつ、誰と見たかは覚えていません。
当時は、ちょうど仕事をしていなかった時期でした。たぶん、ある資格試験をあきらめるかどうか、というころです。
そんなことを思い浮かべながら、寝ました。
あのときはめっちゃ泣いた気がします。今回は、泣きませんでした。
ただ、こころが温まる場面はありました。真相を呑み込むほうにも、賛成寄りです。
伝えないでおこう、と決めたことはありませんか。
本書は自分で購入したものです。献本ではありません。
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