面白い本ほど、続きを読まなくなります。

河野裕さんの小説『さよならの言い方なんて知らない。』(新潮文庫nex)【PR】、1巻から4巻までを読み終えました。
謎めいた手紙に導かれた高校生たちが、「架見崎」という街でチームに分かれて領土を奪い合う、能力バトルものです。
この先、物語の仕掛けには触れません。能力や展開の中身も伏せます。
読んでいる間の感想は、ほとんど「面白い」だけで済んでしまいます。
ただ、次が気になりすぎて、時間がものすごく持っていかれます。
それはそれでいいのですが、読み終えたところで少し冷静になります。やばっ、こんなに時間が経っている。
他のこともしなければと思って、そのまま別のことをして、そのまま忘れます。自分の場合、だいたいこのパターンです。
4冊で1年近くかかりました
実際、4冊を読み終えるまでに1年近くかかりました。けんすうさんが薦めていたのを見かけて1巻を読んだのが、確か去年の9月。
10月末に2巻まで読んで、そこで止まりました。忙しかったのだと思います。
そのままタブレットの中で他の本に埋もれて、存在ごと忘れていました。
戻ってきたきっかけは、ハンターハンターの連載再開でした。
その流れでこの本をまたXで見かけるようになって、3巻を読み始めました。終わったのがお盆です。
その直後、Kindleの99円セールの告知を見て「そういえば4巻も買ってあった」と思い出し、先週末に読み終えました。
9ヶ月半忘れていたのに、戻ってきたら止まりませんでした。
最初に思い出すのは、能力の選び方です
この4冊で最初に思い出すのは、主人公・香屋歩の能力の選び方です。
架見崎では、ポイントと引き換えに能力が手に入ります。
強さが物を言う世界で、臆病な香屋が選んだ能力は、かなり変わっていました。中身はここでは伏せます。
ただ、作中で彼はこう評されます。
「彼はルールの中で能力を選んだんじゃない。目的をルールに落とし込んだ。能力そのものより、あれを選び取った思考が特殊だ」(1巻)
ルールはしっかり理解したうえで、考え方がずれている。ルールがあるのに、そのルールをそもそも疑う。
参加者のほぼ全員が「どう勝つか」を考えている世界で、ひとりだけ別の問いを立てています。3巻には、こんな台詞もあります。
「みんながオセロで争っている中で、あいつだけは色なんか関係なく、ただすべてのマスを石で埋めるゲームをプレイしている。盤上じゃない。前提のルールで戦うのが、香屋歩だ」(3巻)
権力争いのところで、仕事を思い出しました
物語は群像劇でもあって、各チームの権力模様も生々しいです。
あるチームの中で、ナンバー2が頂点の座を露骨に狙っていく場面があります。読みながら頭にあったのは仕事のことでした。
上に行きたい気持ちは正直ありません。ただ、言い方は悪いですが、上をどううまく使うのか。
どう蹴落とすのか。そんなことを考えたりしました。
4冊でいちばん好きだった一文
そして、この本の好きなところがもうひとつあります。
理屈っぽい駆け引きの合間に、ふっと名言のような一文が置かれるところです。4冊でいちばん好きなのは、これでした。
「─暴力の価値を貶める意志を文化と呼ぶ。」(3巻)
香屋が支えにしている、作中アニメのセリフです。これを見たとき、すぐに今の戦争のことを思い浮かべました。
ここから先は本の話ではなく、自分の連想です。なんとか、この言葉のようにならないかなと思っています。
ここまで書いておいてなんですが、いまKindleで1〜4巻が各99円のセール中です(9月3日まで)。
自分はセール前に定価で買って9ヶ月半忘れていた側なので、えらそうなことは言えません。
ただ、始めるにはたぶんいちばんいいタイミングです。
5巻は、もう買ってあります。読み始めたら止まらなくなるのは4冊で分かったので、先にこれを書きました。
読み終えたあとの自分は、たぶんまた別のことをしに行くので。
本書はKindleで自分で購入したものです。献本ではありません。
さよならの言い方なんて知らない。 (全11巻) Kindle版
【PR】





